この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。
社保の適用拡大はすでに始まっている。
社会保険適用拡大 特設サイト|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/
令和4年10月1日から従業員数101人以上の企業、令和6年10月1日からは従業員数51人以上の企業が対象となっている。
人を扶養のままでいさせる力の強い社会保険制度
「社会保険適用拡大」と言っているのを見ると、厚生労働省は、社会保険に入る人を増やしたいように見える。
でも、社会保険の制度だけを見ても、社会保険適用拡大が始まっても、主に結婚している女性を被扶養者に押しとどめる力であふれている。
「扶養を抜けたくないんです」
「時給が上がられたら困ります、社保に入ったら手取りが減ってしまう」
そんな声が聞こえてくる。
国が狙うべきなのは、より多くの人がより多く稼いで、より多くの保険料(と税金)を納めることなのではないかと思うけど、社保の仕組みはまだまだ真逆に作用しているように見える。
「今は給与所得者の扶養に入って無料で健康保険に加入できているけど、月に8.8万円*稼いだら有料になりますよ。」
「月に8.8万円*稼いだら、厚生年金にも入ってもらうから、厚生年金保険料を払ってもらうし、会社も折半で保険料を負担してもらいますよ。」
抑止力が強いように思える。
手取りが減る、世帯収入が減る
私は、結婚している人でも社保にはできるだけ入ったほうがいいと思っている立場だけど、月に8.8万円*稼ぐようになった途端に社保に入るとなると、保険料の負担がかなり大きく感じられるのは当然だと思う。
愛知県で協会けんぽの場合だと、8.8万円の標準報酬月額で社保に加入した場合、
介護保険第2号被保険者に該当しない場合の健康保険料 8,738.4円→折半額4,369.2円
介護保険第2号被保険者に該当する場合の健康保険料 10,181.6円→折半額5,090.8円
厚生年金保険料 16,104.00円→折半額8,052.00円
つまり、介護保険第2号被保険者に該当しない場合で12,421.2円、該当する場合で13,142.8円、保険料を支払うことになる。
時給1,050円で週に20時間、月に80時間働いて月に84,000円稼いでいる人が、時給が1,100円に上がって月に88,000円稼ぐようになったら社保加入で保険料引かれて手取りが76,000円弱になったら、元よりも収入が減るので嫌だなと思わせるのは当然だと思う。
(配偶者に103万円や130万円などを上回る収入があると、「配偶者手当」が出なくなるという企業もあるので、保険料以上に収入が減ることになる場合がある。)
*8.8万円と言っているのは総支給額ではなく、このQ&A集の問41にあるように、「基本給及び諸手当」で判断される。
スロープ化できないだろうか?
もっと、壁じゃなくて、せめて階段やスロープになるような制度設計はできないんだろうか?
老齢年金の在老停止は、だいぶ考えられてスロープになっているように思える。
保険料ももっとスロープっぽくできないものだろうか?
加えて、「社保に入るとこんなにいいことがある」と理解を促進するような広報はできないだろうか?
給料がある一定額を超えた場合、その一定額未満だったときの手取りよりも確実に減るとわかっていたら、今後もっとたくさん働きたいわけでも、すごく稼ごうと思っているわけでもない人は、その一定額を超えないように働くのは当然じゃないだろうか。
それでも、社保には自分で入ったほうが安心だと私は思うけど、多くの人にとってはそうは思えないのも無理はないと思う。
あと、安心だとは言っても、保険料が昔よりかなり高いのは事実。
誰だって手取りが減るのは嫌だよね。